企業間で取引を行う際、下請事業者は不利な立場になりがちです。
それを保護するために設けられたのが「下請代金支払遅延等防止法(通称:下請法)」です。
取引の窓口となる担当者が下請法について知見がなければ、下請法違反となり得る行為をしてしまう可能性があります。
下請法の適用範囲
下請法は適用対象となる取引について『事業者の資本金』と『取引内容』の2つのポイントで定めています。
『取引内容』の種類によって『事業者の資本金』の基準は異なりますが、今回はIT事業のシステム開発に絞って進めます。
親事業者と下請事業者の範囲
- 親事業者が資本金3億円超であり、下請事業者の資本金が3億円以下である
- 親事業者が資本金1千万円超3億円以下であり、下請事業者の資本金が1千万円以下である
要するに、親事業者と下請け事業者の資本金次第で適用されるかどうかが変わって来るということですね。
親事業者の義務
下請法が適用されたからには、親事業者にはいくつかの義務が生じます。
■書面の交付義務
発注に際して所定の具体的記載事項を記載している書面を下請事業者に交付する。
■下請代金の支払期日を定める義務
成果物を受領した日から起算して60日以内、かつできるだけ短い期間内に支払期日を定める。
■書類の作成・保存義務
下請取引の具体的内容等を記載した書類を作成し、2 年間保存する。
■遅延利息の支払い義務
代金を支払期日まで支払わない場合は、受領日から起算して60日を経過した日から支払日までの日数に応じ、当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う。
以上を怠ると下請法違反となるのですが、注文書も貰わずに作業を行った経験がある方は少なくないかと思います。
義務です。「注文書まだきていないけど作業着手するか~」とのんびりしている場合ではありません。義務です。催促しましょう。
親事業者の禁止事項
次は禁止事項を見ていきましょう。
下請事業者を保護するため、11の禁止事項があります。
■ 買いたたきの禁止
著しく低い下請代金を不当に定めることをしてはならない
■ 受領拒否の禁止
下請事業者に責任がないのに注文した物品などの受領を拒むことをしてはならない
■返品の禁止
下請事業者に責任がないのに返品してはならない
■ 下請代金の減額の禁止
あらかじめ定めた下請代金を減額してはならない
■下請代金の支払い遅延の禁止
物品等の受領日から60日以内に定めた支払期日までに全額支払わなければならない
■割引困難な手形の交付の禁止
一般の金融機関で割り引くことが困難であると認められる手形を交付してはならない
■購入・利用強制の禁止
親事業者が指定する物や役務を強制的に購入・利用させることをしてはならない
■不当な経済上の利益の提供要請の禁止
下請事業者が負担する必要のない金銭、労務の提供等をさせることをしてはならない
■不当な給付内容の変更及びやり直しの禁止
費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせることをしてはならない
■報復措置の禁止
違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由に、取引を停止したりすることをしてはならない
■有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
有償支給した原材料等について、下請代金の支払い期日よりも早く、有償支給した原材料等について、その対価を支払わせたり、下請代金から控除・相殺することをしてはならない
「仕様変更があったのに追加費用を認めない」などは不当な給付内容の変更及びやり直しの禁止に該当しそうですね。公正取引委員会又は中小企業庁に通報しましょう。
公正取引委員会は意外と厳しく取締を行っています
仕事してます。公正取引委員会。
・書面調査・立入検査
下請取引が公正に行われているか否かを把握するため、毎年親事業者・下請事業者に対する書面調査を実施しているようです。また、必要に応じて親事業者の保存している取引記録の調査や立入検査なども。
・勧告・公表
親事業者が下請法に違反する行為をしている場合、まず文書により勧告し、会社名とともに違反事実の概要・勧告の概要を公表します。
・罰金
親事業者が義務を怠ったり守らなかった場合には、違反行為をした者(本人)のほか会社も50万円以下の罰金に処せられます。
50万円…少なっ…
下請法は親事業者・下請事業者に関わらず、知らなかったでは済まされません。
きちんと知見を持ちお互いの利益となる取引にしたいですね。

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